劇団員急死問題 宝塚歌劇団いじめ、パワハラ否定 やけど「よくあること」暴言「全て伝聞情報」

[ 2023年11月15日 05:00 ]

 宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の女性劇団員(25)が急死した問題で歌劇団が14日、宝塚市内で会見し、外部弁護士らによる調査結果を公表した。報告書は、遺族側が訴えた上級生からのいじめやパワハラの存在を認めず、長時間労働を強いる環境があったと認めた。問題の責任を取る形で、木場健之理事長(60)は12月1日付で辞任する。一方、遺族側は劇団側の調査結果について反論会見を開き、再検証を求めた。

 木場理事長は冒頭、「大切なご家族の命を守ることができなかった」と神妙な表情で遺族らに謝罪した。

 だが、焦点の一つだった女性へのいじめやパワハラは「確認できなかった」とした。上級生からヘアアイロンでやけどさせられたという遺族側の主張については、劇団診療所から「ヘアアイロンのやけどはよくあること」などと報告を受け、客観的証拠もないため「事実であるかを判断することは困難」とした。「うそつき野郎」「やる気がない」などの暴言があったとされることにも「全て伝聞情報」としてパワハラの存在を否定した。

 兵庫県警は、女性が自殺した可能性が高いとみて捜査している。報告書は女性が新人公演のまとめ役(「長の期」の長)で、背景に長時間労働があったと示唆。そこに上級生からの指導・叱責(しっせき)などを受けた結果、休止直前に「精神障害を発病させる恐れのある強い心理的負荷」がかかっていた可能性があると結論づけた。「過密スケジュール」を強調し、パワハラは疲弊した女性の受け止めの問題と言わんばかり。のらりくらりと他の問題についてかわした。

 ヒアリングは宙組生、OG、役員らに実施。66人いる宙組生のうち、4人は聞き取りを辞退。その理由は「差し控える」とした。

 内容は遺族側調査と大きく食い違う。木場理事長の後任となる村上浩爾専務理事(56)は「ヘアアイロンについては証拠となるものを見せていただけるようにお願いしたい」と話す場面も。遺族側は「娘は何度も劇団に改善を求め相談した」としていたが、木場理事長は「特段ございませんでした」と否定。1カ月の時間外労働も報告書は118時間と算定。過労死ラインを大幅に超える277時間とする遺族側は「実態よりも過少」だと主張している。

 現時点で歌劇団幹部は遺族と直接面会できていない。今後は過密とされる公演スケジュールの見直しを決め、これまでの年間9興行を8興行に減らし、1週間当たり10回の公演を9回に減らす。25日から東京宝塚劇場で予定している宙組の公演は出演者の心身の状態を見極めた上で実施する意向を示したが、「清く正しく美しく」を掲げる歌劇団の暗部は払拭できそうにない。


 ▽長の期 新人公演に出演する入団7年目以下の生徒の最年長の期の名称。新人公演の配役の確認作業や、それに応じた衣装の手配などを行う。報告書によると、長の期は新人公演内の劇団員の失敗について上級生から指導・叱責される立場であり、下級生に対し組のルールの順守を指導する存在とされている。

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