深夜ラジオと同じイメージで接してくれた谷村新司さん 

[ 2023年10月17日 05:06 ]

谷村新司さん死去

78年、日本武道館でコンサート「栄光への脱出」を開催するアリス時代の谷村新司さん

 【悼む】入社7年目だった。谷村さんのマネジャーからの電話を受けた芸能デスクが慌ててポケベルを鳴らしてきた。「今朝の谷村の記事を書いた記者と話したい」。そんな伝言だった。いけないことを書いてしまい苦情を受けるのか…。恐る恐るマネジャーに電話を入れると「明日のコンサートの楽屋に来てもらえませんか。谷村が直接話をしたい、と申しておりまして」という。それが出会いだった。

 約束通り開演前に対面。谷村さんは「叱られると思ったんですか。どうしてどうして」とニヤつきながら迎えてくれた。「記事を読ませてもらって僕の今を凄く良く解釈してくれているな、と思ったので。お礼を言わせてもらいたかったんです」と握手してきた。

 ソロになってからのシングル曲はしっとりと歌ったり、壮大なスケールのバラードが多い。そんな流れの中、96年の「愛に帰りたい」はフォークロック調でアリス時代を思い出す。そう記事に書いたところ、谷村さんは「僕の立ち位置を今どきの若い記者がしっかりと理解してくれているのがうれしいんです」と目尻を下げた。そして「今日のコンサートはきっと楽しんでもらえるでしょう。だってアリスの曲も…おっと、これ以上はヒ・ミ・ツ」と言って人さし指を唇の前で立てた。谷村さんらしい、やりとりだった。

 ラジオ番組で人気を博したトーク力。丁寧な言葉の中にサプライズとユーモアがあり19歳下の記者を敬語で気遣ってくれる。その後も音楽番組の舞台裏などで会うたび同じように接してくれた。

 親が寝た深夜にこっそりと「セイ!ヤング」を聴いて「大人の世界」を妄想した世代。「冬の稲妻」「ジョニーの子守唄」などを級友たちと合唱しながら下校した。大人になって対面しても深夜ラジオで語りかけてきたイメージと全く変わらなかった。もっともっと話を、歌声を聴きたかった。(編集局次長・山崎 智彦)

続きを表示

「美脚」特集記事

「STARTO ENTERTAINMENT」特集記事

2023年10月17日のニュース