藤井聡太8冠、王将戦勝って伝説へ「実力をつける。その上で面白い将棋を」 狙う大山15世名人超えV20

[ 2023年10月13日 04:30 ]

両手で「8」を作る藤井聡太8冠(撮影・井垣 忠夫)
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 藤井聡太王将(21)=竜王、名人、王位、叡王、王座、棋王、棋聖含む8冠=が永瀬拓矢前王座(31)を3勝1敗で退け、史上初めて全8冠を独占した第71期王座戦5番勝負第4局から一夜明けた12日、京都市内で会見した。大逆転での勝利を振り返り、前回全冠制覇した羽生善治九段(53)の「羽生マジック」に通じる勝負術を披露。その羽生が全冠を独占した167日、そして大山康晴15世名人が持つタイトル連続獲得19期を、来年1月開幕の第73期ALSOK杯王将戦7番勝負(スポニチ主催)で更新なるかが次の焦点となる。

 勝利こそ勝負師のご褒美だ。史上初の快挙にも浮足立つことなく藤井は言った。

 「勝ったことで(自分に)ご褒美を、とは考えなかった。勝っても負けてもモチベーションを維持することが大事で、逆に負けたときにどう気分を良くするかを考えます」

 8冠を独占、天下統一を果たしても1勝に満足した。終局後は自室で熱戦を振り返り普段通り眠れたという。

 第3局に続く逆転勝利だった。対局中、後ろを向いて頭をかきむしった永瀬。自身も一度は決め損ねた。幸運を引き寄せたすべを「局面が良くないときは自然に進めてもさらに苦しくなる。相手王に少しでも迫る形をつくって、複雑にすることができればと指した」と解説した。

 局面の複雑化。終盤、相手に選択肢が多く、その読みも外す手を指す。相手を惑わすことで持ち時間をさらに削り、最善手を指しにくくする。羽生が台頭した90年代前半「羽生マジック」と恐れられた勝負術。第4局でも、日本将棋連盟による棋譜中継のAI評価値が0―100から98―2へ急回復した永瀬の123手目は、狙いが見えにくい盤面中央への直前の銀打ちが引き金だった。

 加えて戦型選択を相手に委ね、その研究手順も対局から学ぶ姿勢。相手の研究に飛び込んで倒せば、勝利と同時に研究まで吸収できる。羽生スタイルを継承する、決意表明のように聞こえた。

 では8冠を独占した21歳にこれ以上の標的があるのか。「まずは実力をつける。その上で面白い将棋を指したい」。長期的目標よりも目前のシリーズ、一局へ視線を向ける。

 96年2月、王将戦第4局を制して7冠を独占した羽生は続く棋王戦、名人戦を防衛して棋聖戦に臨んだ。だが7月、当時の三浦弘行五段との2勝2敗の最終第5局を落とし、7冠の一角を失った。その間167日。8冠を独占した今、全冠制覇をどこまで維持できるかが焦点となる。

 そして、20年棋聖戦から継続するタイトルの連続獲得18期。先勝した竜王戦を防衛し、来年1月開幕の王将戦も制すれば20期となり、大山を超える。「面白い将棋」の先に輝く金字塔だ。

 王将戦は現在、挑戦者決定リーグの最中で、羽生が暫定首位。前回に続き羽生が挑戦者となれば、羽生マジックと藤井マジックの対決となる。現役棋士を相手に一つ一つ白星を重ねながら、過去の偉大な棋士とも戦うことになる。


 ≪丹波栗とラズベリーのケーキ 午後のおやつ大反響で完売≫ 第4局会場となった京都市のウェスティン都ホテル京都で藤井に提供された午後のおやつ「丹波栗とラズベリーのケーキ」=写真(日本将棋連盟提供)=が反響を呼んだ。報道を受け、約20個が昼過ぎで売り切れ、20個を追加で製造した。「昨日藤井さんが食べたケーキはありますか?」との問い合わせが相次いだという。一方、羽生が7冠独占を達成した山口県下関市には記念の石碑ができたが、同ホテルには建立の予定はないという。

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