「どうする家康」明智光秀“くそ童”に刺されたワケ「家康の真逆」酒向芳アドリブ連発!演出絶賛の怪演裏側

[ 2023年8月5日 13:50 ]

大河ドラマ「どうする家康」第29話。三日天下に終わる明智光秀(酒向芳)。村人たちに取り囲まれ…(C)NHK
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 嵐の松本潤(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は7月30日、第29回が放送され、「本能寺の変」(天正10年、1582年)を成した戦国武将・明智光秀の最期が描かれた。“くそ童(わらべ)”に刺されるという今作の明智らしい幕切れ。同回の演出を担当した川上剛監督に撮影の舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどのヒット作を生み続ける古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河初主演となる。

 第29話は「伊賀を越えろ!」。織田信長、死す――。衝撃的な報が世を駆け巡る中、明智光秀(酒向芳)の命令により、徳川家康(松本潤)は浪人から村人まであらゆる者から命をつけ狙われることに。岡崎へ帰還すべく、家臣団とともに逃げる家康に、服部半蔵(山田孝之)は服部党の故郷・伊賀を抜けるべきだと進言。光秀の追手を欺くため、酒井忠次(左衛門尉)(大森南朋)らと別れた家康は伊賀の難所を越え、一路岡崎へ向かうが、道中、謎の伊賀者たちに捕らわれ…という展開。

 家康は「伊賀越え」に成功。羽柴秀吉(ムロツヨシ)は戦国屈指の強行軍「中国大返し(備中大返し)」(備中高松城攻めから、全軍を率いて中国路を京へ取って返した大移動)を敢行した。

 「その頃、山陽道(姫路付近)には、大急ぎで京を目指す大軍勢が。本能寺の変から11日後、明智光秀は戦(山崎の戦い)に敗れ、都を追われておりました」(語り・寺島しのぶ)

 山城・小栗栖。明智が「わしの…わしの方が、信長よりも、うまいことやれたんや!」と叫んだ時、背中に激痛。子どもに竹槍で突き刺された。「こんの、くそ童が!わしを誰やと思っとるんや!」。さらに子どもたちに襲われ、農民たちに取り囲まれると「ハハハ…わしは、明智やないぞ。明智やないぞ」。四方八方から串刺しにされ、地面に倒れ込み、天を仰いで力尽きた。

 「こうして見事、明智光秀を討ち、織田信長公の敵を取ったのでございます。あんの男が」(語り・寺島しのぶ)

 明智の首級が秀吉の元に運ばれる。「あ、明智殿。今までで一番ええ顔しとるがね」――。ニヤリと笑った。

 「まず大前提として、第29回のテーマは『徳』だと考えていました。徳のある家康は無事、伊賀を越えますが、徳のない光秀は落ち武者狩りに遭い、敢えなく落命する。そのコントラストを強くするというのを至上命題にして演出に臨みました」と切り出した川上監督。

 「当時たぶん日本一の有頂天男が、まさかの三日天下で命を落とすわけですが、秀吉に負けて落ちていく小栗栖(京都市伏見区)で、家来を楯にして1人だけ逃げ切ったと思いきや、後ろから竹槍で刺される。振り返って、自分の天下を終わらせた人間はどこのといつだと見た瞬間に、そこに『一番弱い存在』があったら、すなわち意外にも『子どもの手にかかっていた!』と知ったら、酒向光秀はどんなお芝居をするんだろうと。その屈辱感や悔しさ、衝撃と憤りが是非とも見たくて子どもをキャスティングした次第です。子どもたちも素晴らしい表情を出してくれました。徳のない為政者に振り回される民衆の怒りを託したわけですが、『家族の仇だと思って明智さんを突いてね』とお願いしました」と狙いを明かした。

 酒向は岐阜県出身。昨年11月に衣装合わせで初対面し「地元の言葉の話題になりました。今回、悪口といえば、三河地方の古老に教えてもらった『あほたわけ』を前面に出していますが、酒向さんが『岐阜の地元では“くそたわけ”ですね』と教えてくれて『それは面白いですね』と盛り上がりました」。使いどころを相談してみると「酒向さんが『出せるとすれば、明智が天下を獲るあたりかなぁ。そこでキャラクターが豹変するだろうし』と。そんな話をした記憶があります。ずっと半ば宿題のようにしていた『くそたわけ』が今回、見事、花開いたという印象です。酒向さんがアドリブで存分に連発してくれました」と感謝した。

 三日天下の転落ぶりを酒向が怪演。「本当に最高でした。伊賀越えで忍者に捕まった際に『わしの首をやる。だから他の者は見逃せ』と言った家康の真逆を演じたいということで、酒向さんは下手人が子どもだと分かった瞬間に「このくそ童が!わしを誰やと思っとるんや!』と見事なまでに“ニワカ天下人”ならではの逆上をしてくれました。その直後に大勢の農民に取り囲まれてしまうや否や、『わしは明智やないぞ』と訴え、往生際悪く生きながらえようとする姿は絶品でした。明智という役をとことんまで生き抜いた酒向さんのアドリブに、ただただ感服です。そういう芝居を引き出せたという意味でも、子どもを起用したのは正解だったと思っております。汗だくになりながらフル装備の立ち回りを熱演してくれた酒向さんに感謝するとともに、因果応報、“徳のない男”明智の最期を、視聴者の皆さまにもお楽しみいただければ幸いです」。台本のト書きは「村人たちの槍の餌食に」だけだったが、川上監督と酒向のアイデアにより、明智の終幕、引いては家康の生還が際立った。

 次回第30回は「新たなる覇者」(8月6日)が放送される。

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