王座戦第1局 永瀬王座が妙手の防壁 序盤劣勢も豊富な持ち駒生かし守り切った

[ 2023年9月1日 04:50 ]

第1局を制した永瀬王座(撮影・尾崎 有希)
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 将棋の第71期王座戦(日本経済新聞社主催)5番勝負は31日、神奈川県秦野市の「元湯陣屋」で第1局が指され、史上初の全8冠制覇を狙う挑戦者・藤井聡太王将(21)=竜王、名人、王位、叡王、棋王、棋聖含む7冠=は永瀬拓矢王座(30)に150手で敗れた。藤井は振り駒で得意の先手番を得たにもかかわらず、痛い黒星発進。4連覇中の永瀬は名誉王座の資格獲得まで2勝と迫った。第2局は9月12日に神戸市で行われる。

 永瀬は大きな、大きすぎる白星を藤井からもぎ取った。「まずは先勝することができて良かった。本局は後手番なので、どう付いていくかが勝負。大きく崩れていなければいいと…」。先手で圧倒的に強いモンスターを撃破したこのブレークには、1勝以上の価値がある。

 戦型は角換わり。これも藤井の得意戦法だ。オーソドックスな腰掛け銀を目指す相手に早繰り銀を仕掛け、用意周到な工夫を披露する。「両者主張のある形」の中で8筋の突破を目指したが、主砲の飛車が藤井の歩の連打によって効力を失い、戦いの場を他に求めざるを得なかった。

 形勢は徐々に先手へと傾いていく。63手目に角を切って勝負に出た藤井に圧をかけ続けられたが、ここで諦めるようなら「軍曹」の異名が泣く。84手目の[後]2六香が乾坤一擲(けんこんいってき)の勝負手だ。誘いに乗った相手の裏を取るように王手金取りとカウンターを当て、攻守の潮目を入れ替えた。96手目には先に1分将棋へと追い込まれながら、盤上の隅々に視線を送って妙手をひねり出す。弾切れ覚悟の猛攻を最終盤に浴びながら、124手目には5一に守りの飛車を配置して守備を強化。「負けない将棋」を地で行く進行で史上最年少7冠の戦意を喪失させた。

 着心地に違和感を持つ和服を着用してのタイトル戦は20年9月3日の王座戦以来3年ぶり。以来、対局に集中するためスーツ姿を通したものの、今シリーズは和服姿が原則と定められた。ディフェンディングチャンピオンなのにハンデを背負う面もあったが「規定ですから」と潔く受け入れた。対局が佳境に入ると袖をまくり上げて盤面をにらむ姿からは言い知れない迫力が漂っている。

 昼食、夕食ともに名物の陣屋カレーを注文し完食。和服姿でも、持ち味の健啖(けんたん)ぶりは健在だ。「次までは少し日にちがあるのでしっかり準備したい。先後も決まっているので」。先手番の第2局を取れば一気に王手だ。最強の挑戦者を倒すチャンスが膨らんできた。


 ≪ともに昼食は名物「陣屋カレー」≫昼食は、藤井、永瀬ともに対局場の名物の一つである「陣屋カレー(ビーフ&伊勢海老シーフード)」を選択した。ビーフカレーとシーフードカレー2種類が盛り付けられ、ライスには迫力の伊勢エビフライ。日本料理を提供する旅館だが、米長邦雄永世棋聖の「カレーを食べたい」との要望で将棋のタイトル戦のために作られたとされ、過去にも多くの棋士が味わってきた。「陣屋カレー」は普段はルームサービス(税込み2750円)でのみ提供され、将棋ファンにも愛されている。

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