野島伸司氏「誰かの心に残り続ける作品を」 5年ぶり連ドラ脚本、テレ朝系「何曜日に生まれたの」

[ 2023年8月19日 04:45 ]

東京タワーを背に笑顔を見せる脚本家・野島伸司氏(撮影・河野 光希)
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 「101回目のプロポーズ」「高校教師」など数多くの大ヒットドラマを生み出した脚本家の野島伸司氏(60)が5年ぶりに連続ドラマを手掛けている。飯豊まりえ(25)が主演するテレビ朝日系「何曜日に生まれたの」(日曜後10・00)。近年はアニメや漫画などの2次元を軸に活動し「連ドラに戻る気はなかった」と話すが、なぜ帰ってきたのか。本紙にその思いを語った。

 いじめ、家庭内暴力…鋭い視点で社会を描く野島氏の取材は、都内のビル18階の会議室で行われた。正面に東京タワーが望める場所だが「こんな所でやるの!?僕、高所恐怖症なの」と苦笑い。途中、窓のない部屋に移ると「ここ、いいね」と笑った。柔らかい語り口と瞳が印象的だ。

 今年、脚本家デビュー35周年。時代とともに、作品に対する考え方も変わった。きっかけは新型コロナウイルス禍。鬱屈(うっくつ)とした世界情勢で、人々は心を照らす“英雄”を求めた。「コロナ禍ではそれが、エンゼルス・大谷翔平であり、将棋の藤井聡太7冠。そしてアニメ『鬼滅の刃』でした」と振り返る。日本のエンタメからはスターではなく、作品そのものが“光”になった。「この世界は面白そう」とアニメ界に飛び込む決意をした。

 実際に挑むと、これが楽しい。ドラマでは予算問題で撮影が難しい場面も、アニメならできる。2次元のファンは好きな作品を長く愛することも多い。「圧倒的に制作の自由度が違うし、ファンのいちず性も僕にとっては素敵なこと。もっと書きたいね」と笑った。

 新たな可能性へ進む中で、なぜ再びテレビドラマに携わったのか。今作が放送中のテレ朝系(ABCテレビ制作)の日曜夜10時のドラマ枠は「上質」がコンセプト。オファーを受け「特に要望も言われず、自由に書かせてもらえた」と話す。昨今では新作ドラマが次々に生まれては配信され、作品の流行サイクルが早い。「作品が消費されやすくなった時代。それなら、いつまでも残る良い作品を作りたかった」

 閉塞感のある日常の中で、人々を魅了するものは情熱だ。大谷の豪快で繊細な投打に魅せられ、藤井のりりしい対局姿に人々が感動を覚えるように、野島氏なりの戦い方がある。「物書きは一種のラブレターを書いているようなもの。消耗されず、物語と視聴者が深くシンクロして交ざり合うような、誰かの心に残り続ける作品を作り続けたい」。大谷や藤井のように、誰かの心に“熱”を宿すような物語を生み出していく。それが野島氏が5年ぶりに連ドラに復帰した答えだ。


 ◇野島 伸司(のじま・しんじ)1963年(昭38)3月4日生まれ、新潟県出身の60歳。88年「時には母のない子のように」で第2回フジテレビ・ヤングシナリオ大賞を受賞。同年、フジテレビ系連続ドラマ「君が嘘をついた」で脚本家デビュー。SMAPの「らいおんハート」の作詞も担当。

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