【高松宮記念】武英智師が明かした!メイケイエール愛「バチバチに仕上げます」
春のG1シリーズの水曜付新企画「G1 追Q!探Q!」がスタート。毎回、担当記者が出走馬の陣営に「聞きたかった」質問をぶつけて本音に迫る。第1弾の「第54回高松宮記念」は大阪本社・田村達人(31)が担当。ラストランを迎えるアイドルホース・メイケイエールを管理する武英智師(43)に「ファン」「愛馬」「最後の一戦」の3テーマを問う。
アイドルホース・メイケイエールのラストラン。20年夏のデビューから約4年。出遅れや暴走など、能力を出し切れないレースも多かったが、常に一生懸命な走りでファンの心を動かした。管理する武英師は「能力やビジュアル以外にも魅力はあるが正直、ここまで人気が出るとは想像もしていなかった」と振り返る。高松宮記念での引退が正式に発表されたのが先月20日。レースが近づくにつれ、たくさんのファンレターが厩舎に届いている。「トウカイテイオーやオグリキャップが人気絶頂の時ってドラマしかなかった」。ラストランで“奇跡”を演出した歴史的名馬を引き合いに出し「言霊や勝つイメージを持つことは凄く大事だと思っている。ここでめっちゃ強い競馬をして、周りから“もう引退するの?”と惜しまれるのが理想ですね。エールを応援してくれるファン全員で願ってほしい」と呼びかける。
メイケイエールは20年小倉2歳Sを皮切りにG2、G3各3勝。計6勝は現役最多の重賞勝利数(JRAのみ)だ。残すはG1タイトルのみ。これまで10回の挑戦で最高着順は20年阪神JFと21年スプリンターズSの4着。届きそうで届かないが、武英師は「若馬の頃から“凄い馬だね”“G1を勝てる”と言ってくださった関係者の方々もいるけど、僕も騎手をやっていたから(この馬を扱う)難しさがよく分かる。そんな簡単な話ではない」と語る。常に激しい気性との闘い。我慢を覚えさせるため、折り返し手綱やホライゾネットの着用、ハミも複数試した。「繊細なところを長所として捉え、競走馬としての良さを残しつつ、全てを消さないように育ててきました。いろんな調整をしてきたが最後まで(独特の)個性がありましたね」。だが、それも彼女の魅力の1つだ。「この子、乗りやすかったら相当強かった。でも(個性ある)今だからこそ、これだけの人気がある」と誇らしげに語る。
今年のフェブラリーSをペプチドナイルで制し、18年の厩舎開業から7年目でG1初制覇。99年の騎手デビューから通算すると、25年のホースマン人生で初めてつかんだビッグタイトルだ。「長かった」。レース後に率直な感想を口にした武英師は「(G1を勝ったことで)スタッフ全員のモチベーションがさらに上がった。もっと勝とうと日々、僕と同じ気持ちで頑張ってくれている」と感謝する。エールはラストランの舞台となる中京芝1200メートルのレコードホルダー(1分6秒2=22年セントウルS)。「かみ合った時の爆発力は凄いし、能力は絶対に負けていない。まぐれでも運でもいい。とにかくゲートを出てほしい。最後は無事に…というが、それはどの馬も当たり前。僕らは最後まで諦めず、やることをやる。バチバチに仕上げます」。強い決意と愛馬への信頼を胸に。そして奇跡を信じて最後の一戦に挑む。
◇武 英智(たけ・ひでのり)1980年(昭55)12月31日生まれ、滋賀県出身の43歳。武豊&武幸四郎師兄弟と、はとこの関係。99年、栗東・領家厩舎所属で騎手デビューし、JRA通算1887戦66勝。12年に騎手引退後、木原厩舎で調教助手を務め、17年に調教師免許を取得。18年3月に厩舎を開業した。JRA通算1831戦140勝、うち重賞9勝。
【取材後記】武英師を取材していて、感心するのが信念を持って馬づくりに取り組んでいる姿勢。一頭一頭に全力で愛情を注ぐ。ネガティブな発言はあまり聞いた記憶がない。その真っすぐで熱い人間性に記者も引きつけられている。
メイケイエールを担当する吉田貴昭助手は武英師と保育園で遊んだ同い年の幼なじみ。「仕事はもちろんですけど何事に対しても真面目で熱いですね。尊敬できる部分がたくさんある」。同じ目標に向かう“同士”にリスペクトを込める。
愛馬の引退については「まだ実感が湧かない」。レース後には引退式が予定されている。「その時は泣いてしまうかも…ですね」。エールに関わる全員が現役馬として残された時間を大切に過ごしている。(田村 達人)
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