異色の経歴から世界へ―伊藤雅雪 10年目の初挑戦「自分ならやってしまうんじゃないか」
プロボクサーと聞いてどんな印象を抱くだろうか?ストイック、ハングリー、アウトロー…「あしたのジョー」世代だと、そんな感じだろうか。「はじめの一歩」読者なら、“いじめられっ子”という言葉を思い浮かべるかもしれない。実際のプロボクサーは多種多様で、プロになるまでの道のりも多岐にわたり、プロ野球選手やJリーガー(プロサッカー選手)などとは違ってアマチュア経験がないままプロになる選手もいる。ただ、世界王者クラスになると12年ロンドン五輪金メダリストのWBA世界ミドル級王者・村田諒太(32=帝拳)を筆頭に高校や大学などアマなどで実績を残したがほとんどだ。
現WBC世界ライトフライ級王者・拳四朗(26=B.M.B)は奈良朱雀高から関西大へ進みプロ10戦目で世界王者に、IBF世界ミニマム級王者・京口紘人(24=ワタナベ)は伯太高から大阪商業へ進んでプロ8戦目で世界タイトルを手にしている。ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級トーナメントに出場するWBA王者の“怪物”井上尚弥(25=大橋)は新磯高時代にアマ7冠を達成。6戦目で世界王者、8戦目で2階級制覇、16戦目で3階級制覇を果たした。拳一つで成り上がることのできるスポーツだが、現在は他の競技同様にアマでキャリアを積むことが世界チャンピオンになるための“王道”になりつつある。
そんな中、日本時間29日にWBOスーパーフェザー級王座決定戦に臨む伊藤雅雪(27=伴流)の経歴は少し異色だ。抜群の運動能力を誇り、バスケットボールのスポーツ推薦で駒大高へ。バスケ部を引退後に「何か他のスポーツを」と、家から10分ほどの所にある伴流ジムでボクシングを始めた。駒大に進学したが、関東大学リーグ1部の強豪ボクシング部には入らず、在学中にプロデビュー。15年に日本タイトルに挑戦した時から試合のたびに米国ロサンゼルスで長期合宿を続け、腕を磨いてきた。
プライベートでは学生結婚した夫人との間に2人の娘もいるが、年間の半分を単身ロスで過ごす。“絵に描いたような幸せな家庭”を離れ、あえて厳しい環境に身を置いてきた。18歳でボクシングを始めて10年かかって、ようやくたどり着いた世界戦。「不安もあるけど、期待とかワクワク感の方が大きい。自分なら(大きなことを)やってしまうんじゃないかと思っている」。試合はESPNで全米に生中継され、日本でも29日11時からWOWOWライブで生中継される。伊藤がどんな戦いを見せてくれるのか注目している。 (大内 辰祐)
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